零霊散の備忘録

平成生まれの30代。最近は競馬ばっかり書いてることに気付いた。

天久鷹央シリーズ「魔弾の射手」感想

※このブログには天久鷹央の事件カルテ「魔弾の射手」ネタバレを微妙に含みます

 

 

今作はなかなかのミスリード

 

魔弾の射手 :天久鷹生の事件カルテ (新潮文庫nex)

 

魔弾の射手 :天久鷹生の事件カルテ (新潮文庫nex)

魔弾の射手 :天久鷹生の事件カルテ (新潮文庫nex)

 

 

ブログ引越し作業が滞っている中での新作(2019年9月現在)感想なので、順番かっ飛ばしてる感が凄まじいが、ご愛嬌ってことでシリーズ10作目

 

 

 

 

 

 

 

 

大雑把な復習と紹介

簡単に言えば「相棒」医療ver.

大病院に2人だけの特別部署があって、診察ついでに事件まで首を突っ込み解決してしまうというスタイル

作者が医師ということもあって医療現場描写がリアル。専門用語が頻発するわけじゃないので、医療知識ゼロでもミステリーが好きな人ならスラスラ読めることだろう。医療知識があると「なるほど」と思うところがあったりする。こういう時だけ薬学部出て良かったと思うのだった━━━

 

 

 

繰り返すがシリーズ10作目

そう10作目

今度こそ人工呼吸レベルのトラブルが発生して小鳥遊と鷹央がキスの1回でもしてくれないものかと期待したが、無かったね、全然…

 

ジャンル:ミステリーは、謎解きという面では平和だけど、人が死ぬ・殺されるがある以上、サブイベント的要素で緩和しなければ気が滅入る。シリアスな展開があるのなら、たまにはギャグ回で中和するように、息抜きも必要なのだ。このシリーズではやっぱりラブコメ的展開を期待するのがスジというもんだろう。断じて鴻ノ池の行動に賛同するわけではない

 

 

魔弾の射手

自殺の名所と化している廃病院で、繰り返し起こる転落死。自殺でなければ何なのか?まず、何故このタイトルになるのか、という疑問を抱えながら読むことになる。誰かが狙撃した?でも撃たれた痕跡があるわけでもない。見えない銃弾?

 

魔弾の射手そのものの原作はオペラだけど、某笑顔の絶えない吸血鬼マンガでマスケット銃持った萌えヒロインが歌ってたり、某アラフィフ教授が使ってたりと、絶対に命中する呪われしチートアイテム的な概念で有名

 

 

本題

チートアイテムの件は置いといて、

現場が自殺の名所と化してるのを理由に、よく調べもせずさっさと処理してしまう警察に変わって調査しに行く。というのはお決まりのパターン

 

肝心な鷹央先生がインフルエンザで現場調査不可というのが「想定内のトラブル」で、巻き込まれポジションの小鳥遊先生と鴻ノ池研修医が代理調査

探偵役はそう動かず、ワトソン役が多忙

ミステリーあるあるですね

 

今作の謎は実にシンプル

廃病院屋上の時計塔から謎の転落死

それ故に仮説が限定的になりすぎてしまい、自殺の名所での新しい自殺と処理してしまうのも頷ける。反論材料は「自殺なんかする人じゃない」という微妙なものだけ。そのため謎を解くには被害者の生活的背景を読み進めなければいけなくなる

 

けど、死因に不自然な点が無い限り自殺をしない理由というのがまた難しい。末期癌だったり借金があったり、自殺したくなる動機は探せても、事故はおろか殺人に結びつけるのは至難の業と言える。それだけ自殺という行為が抱える闇の深さが半端ないってことだ。嫌になるよね

それ故にちょっとした息抜き場面は貴重なのだ

 

 

 

さてさて、冒頭でなかなかのミスリードと言ったわけだが、医療モノでカンのいい人は、この時点でアレじゃない?と想像したことだろう

 

鷹央先生が感染したインフルエンザ

それに伴う異常行動

例えば飛び降り

 

薬の副作用として位置付けられてる異常行動だけど、実はインフルエンザ脳症というのもあって、インフルエンザは高熱が出るだけの病態ではないという点

 

結論を言ってしまえば今回の事件とインフルエンザは全く関係ありません。これはミスリードというか、医療知識があればそっち方面に解釈することも可能だよね、ってだけ

 

インフルエンザ感染による異常行動が仮にあっても、わざわざ現場に行く必要は無いし、誘導、誘発することはまず無理だ。それをどうにか出来るトリックが~~、と考えようと思えば考えられるかもしれないけど、理屈と膏薬はどこにでも付く。バカに付ける薬がないのは残念だけど(ふふふ…薬学出身者ジョーク)

 

ちなみにミスリードは他にある

え、コレがそうだったのか?と思える描写がちゃんとあるので、それはここで書くのを控える。ミステリーはマジックショーみたいなものだから、一度タネが分かっちゃえば微妙になっちゃうからね

 

 

総評

謎解きという点では★★★★☆

だけどその他が★☆☆☆☆

 

謎解きメインのミステリーなら文句無しで楽しいけど、僕はほら、その上で違う部分を望んでいるところもあるので。シリーズ10作目だし、もう少しキャラ同士の進展をさぁ…

そういう欲求はラノベに向けるべきってのも分かってるけど、闇が深ければ謎を解いて犯人を特定したところでスッキリしないからね…

 

現実でもそう

世間を騒がせた凶悪事件の犯人が捕まっただけじゃ終わらないし、ワイドショーやSNSを通して、犯人を相手にすれば誹謗中傷が正当化されてしまう醜さがある

だからメインは事件で謎解きでも、芸能人同士の結婚だとか美味しい食べ物紹介とか全然違う部分を混ぜながらスッキリしたいのだ

 

最後の最後にちょっっっっっとだけそれっぽいのがあったけど、進展とは言いがたい

 

小鳥遊先生の春はまだまだ先…

僕も恋愛したくないからを理由に結婚してしまいたい 

 

11作目に期待です

 

オマケ小説良かったです