零霊散の備忘録

平成生まれの30代。最近は競馬ばっかり書いてることに気付いた。

天久鷹央シリーズ「神話の密室」感想

※タイトル通り ネタバレ注意

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 目次

 

大雑把な復習と紹介


簡単に言えば「相棒」の医療ver.

大病院に2人だけの外部から回された面倒臭ェ患者用の特別部署があり、診察ついでに超常現象や事件に首を突っ込み解決してしまうというスタイル。作者が医師ということもあって医療現場描写がリアルで、それでいながら専門用語が頻発するわけじゃないから医療知識ゼロでもミステリーが好きな人ならスラスラ読めること間違い無し。逆に多少なりとも医療知識があると「なるほど」と思うところがあったりする。薬学部卒業の僕はコレを読んでる時だけ薬学知識でニヤニヤできるのだった

 

レギュラー登場人物

 

天久鷹央

中学〜高校生にしか見えない2X歳。サヴァン寄りのASDで探偵役。大病院の副院長。酒豪。言葉に態度も悪いが、知識が最強で逆らうに逆らえない。僕の脳内では釘宮ボイス

 

小鳥遊優

主人公で語り部のワトソンポジ。上司に[鷹]がいるので通称[小鳥]。外科から内科に転属し、年下上司の鷹央の下で働く。のだが、内科の仕事がない時は人手の足りない救急部へ派遣されるパシリ役の器用貧乏。出会う女性に声をかけてはフラれ続けて今作で11冊目。空手経験者で戦闘要員

 

鴻ノ池舞

いつまで経っても研修医。鷹央のファンで、小鳥遊を弄る役。ムードメーカー兼、トラブルメーカー兼、司会進行兼、合気道経験者で戦闘要員

 

本題

 

今作は二本立て

 

[上]バッカスの病室

 

泥酔した五十代男性が搬送されるところから始まる。男性は自称「有名な小説家」で、実際その人は嘘偽りなく名の知れたミステリー作家。そのデビュー作は読んだことのない鴻ノ池でも聞いたことがあるほど。しかし本人や周辺からは、知名度や評価でデビュー作を超えられない作家ならではの生みの苦しみ、出版不況などが語られ、ここ最近はSNSでの率直な意見に感想が余計なストレスに。それがアルコール依存に繋がってると簡単に推測されたのだが、入院して奇妙なことが起こる。アルコールを持ち込んでいないにもかかわらず、閉鎖病棟という密室で泥酔してしまったのだった。誰かがアルコールを持ち込んだのか?アルコール無しで泥酔するなどあり得るのか?

 

[下]神のハンマー

 

小鳥遊が大学時代に空手部でコーチをしてくれた人が、キックボクシングのタイトルマッチに出場。試合を見に行った小鳥遊と鴻ノ池は応援。満身創痍になりながらも見事に勝利し、新チャンピオンが誕生した。チャンピオンベルトが巻かれ、これからセレモニーが始まろうとするまさにその時、新チャンピオンはリングの上に倒れた。レフェリーがリング外のドクターを呼び、心臓マッサージが始まる。除細動器が使われる物々しい事態に、観戦していた小鳥遊と鴻ノ池も手伝いに加わり、勤務先である天医会総合病院へと搬送された。しかしそのまま心臓は再鼓動することはなく、患者は死亡。格闘技による不慮の事故と思われたが、患者の妻が、夫は『殺されるかもしれない』と生前口にしていたという。事故ではなく殺人なのか?試合直後のリングの上、衆人環視という密室での殺人は可能なのか?

 

総評っぽいもの

 

神話の密室とあるように、今回のテーマは密室。けれど謎は密室であることよりもいつもの様に患者の病態で、現場が密室なのはある意味オマケに近く、容疑者が限定しやすくなるだけの舞台装置。針とか糸とかワイヤーとかテグスを使ってどうやって密室を作ったかではなく、密室内にあるものを使って患者が何故この様な状態になってしまったのかを考えるのがお馴染みの流れ。[上]に関して言えばアルコール症状、[下]に関して言えば心臓発作。誰もが陥りやすいちょっとした思い違い、勘違いを突いた医療トリックとも言える演出にまたしても感動。医療と思わせながら、健康番組知識で充分太刀打ち出来るレベルに抑えてあるところがグッド。聞いたこともない〇〇病のどーたらこーたら症状でどうこうっていうのは一切無し。ちゃんと医療してるしミステリーしてるので評価は★★★★★。しかし残念な事に小鳥遊に春は無く鷹央先生とのラブロマンスは無しなのでそこの評価は★☆☆☆☆、と

 

前作「魔弾の射手」から約1年待って作中のキャラに進展が無いっていうのはどーなのよ?と少しガッカリはしたものの、関係が進展してしまったら最終回な感じがするからそれはそれで嫌だなという、シリーズで追いかけてる側の理不尽な感想

 

小鳥遊にグイグイ行く美人薬剤師とか登場させて鷹央先生をアタフタさせても良いのよ?逆にイケメン薬剤師が鷹央先生に絡んで小鳥遊をオドオドさせるのもアリ

僕の勝手な脳内同人設定です

 

また、大人しく続編を待ちましょう

 

以上、お疲れ様でした