零霊散の備忘録

平成生まれの30代。最近は競馬ばっかり書いてることに気付いた。

理解と解釈と

※テレビを見て自分も感じた『こだわり』について

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アナウンサーの古舘伊知郎さんが、確かGACKTさんと一緒に「すべらない話」に出演していた時の回のこと


まずはそれの文字起こし

録画して見て、凄い好きだったから覚えてる

 

古舘伊知郎「おき」と「ごと」の違い)

これはね、ちょっと僕の言葉に対するこだわりが強いかもしれないんで、申し訳ないかもしれないんですけど。去年2019年の、5月ですかね。松本人志さんとたまたま飲む機会があったんですよ。かなりお互いに酔っぱらってたんですけど。ちょうど令和に切り替わる瞬間だった。松ちゃん、ほら12時跨いだ、みたいな。何だか分からないけどおめでとうと言い合う感じの。そしたら、ちょっと経ってから「古舘さん、ちょっと言葉に対するこだわりが強いんで聞いてみたいことがあるんですわ」いやあ、なんでもってわけにはいかないけど、っつって勢いで言った。そしたら、はっきり覚えてるんだけど

 

「おき」と「ごと」の違いってなんすか?

みたいなこと言ってた

おかしいんですよと、松ちゃん曰く

 

あの男は30秒おきにドアをノックしやがった

あの男は30秒ごとにノックをした

 

同じですよね

だけど何なんすかね

 

1年おきに来るんだよあいつ

1年ごとに必ず来るんだよ

 

意味違ってきますよね?

1年ボンとおくとかおかないとか。これどう違いがあって何処が似てるんですか、みたいなことを言ってくれたから、ものすごい勢いに乗って言おうと思ったんだけど、正解見出せてないんですよ。だけど引っ込みつかない、見栄っ張りで。言葉でフラれたからドンと返そうと思って勢いだけ

 

あのね、松ちゃんね、「おき」っていうのは一度分断されるんですよニュアンスが。飛び石連休の飛び石みたいなもんですよ、「おき」って1日おきにこの薬飲んでくださいねってことは1日置くんだから一度分断される。ところが「ごと」ってのは毎日の「毎」だから連続性を持ってる。1日「ごと」にって言ったら1日に1回飲むんだからずっと続いていく。この違いがハッキリしてますよね、ってかろうじて言った。コレが正解だと分かってないけど言った。そしたら「そういう風にすぐ返すとこがすごいんですわ」つって違う話になった。全く納得できない自分自身。やっぱり天下の松本人志にウソとは言わないけどニュアンスだけで逃げた自分も許せない。これでだいぶ遅くなって別れてからウチ帰ってもう寝るまで首っ引きですよ、もうスマホと。ほいで徹底的に検索した。そしたらね、やっぱり国語教師用にちゃんとマニュアルみたいなのがあっていっぱい書いてあるんですよ。おきとごとの違いに気を付けて、あるいは英会話を教えている先生にも英語に直したら大変なことなんで気を付けてくださいっていう、そういう例はいっぱい載ってるんですけど

 

そこでかろうじてわかったのは、

ちっちゃい単位の時は同じなんですよ

 

1時間おきに起きちゃった

1時間ごとに目覚めちゃった

 

同じなんですよ

ところが小さい単位じゃなくて長い単位になって

例えばオリンピック

 

3年おきに開かれるでしょ

4年ごとに開かれてるんですよ

変わってくるんですよ

 

だから小さい単位の場合は同じだけど、離れたら二股に分かれて意味が変わってくる

でそれが分かったんだけど全く納得できないんですよ。これだけだったら電話もできないですよ。どっから枝分かれするか出てないから。もうイライラ、イライラして、松本人志にきちっと言いたい。あの時逃げ切っちゃったから。ほいでどうしようかなと思ったけどついに、国語学者金田一先生に電話したんですよ。金田一京助金田一晴彦、金田一秀穂さん。まさに国語界の世襲制。でそこに、フジテレビで一緒に番組やってたことあったからディレクターから電話番号聴いて申し訳なかったんだけど電話した、一念発起で。そしたら留守電になって、結果的に地方行ってたみたいなんですよ。留守電になっちゃうんだけど久々だから気が引けるんですよ。大変申し訳ない。たまたま朝日新聞で3日前の朝刊に載ってたオピニオンのところで先生の言葉に対するこだわりを専門領域でお聞きしまして、この頃は若い方々がコンビニさんを曲がってとかスタッフさんに元気付けてらってだとか、みんなさん付け関西の人じゃないのにしますけどアレは本当に間違いでアレは素晴らしいことでした、って留守電にどうでもいいこと一生懸命言っちゃった。そこはさておき、ある方からおきとごとの違いを聞いて、私がしっかり答えられなかったのが憤懣遣る方無いんで先生に教えていただきたい。3日連続でやったけど返しないんですよ。嫌われてるのかな、と思ったんだけど4日目に「地方から帰ってきました古舘さん、何事ですか」って電話あった。で嬉しくなちゃって、実は、名前出しちゃいけないと思ったんで、ある方がおきとごとの違いどっから分かれるんだって聞いててね。単位がちっちゃいとかおっきいとかで変わるってのはかろうじて分かったんですけど先生教えてくださいって言ったらケラケラって笑って「よく来るんです我々の国語界の世界では定番の疑問質問です」ってうわぁ教えてくれるんだと思って

 

どっから分かれますかと

1日おき1日ごとで変わってくるし

長い単位のどこがボーダーラインで意味が変わってくるんですか

 

「全く意味はありません」

 

どういうことですかって言ったら

「我々言語界の中でもはっきり言えます。なんです。答えは分からないんです」

え?枝分かれする瞬間も何もない?

「何にもありません。そこに数字が乗ってきて24時間ごととか24時間おきとか、例えばそういう複雑な数字が絡み合った時でも、個人差があっておきとごと一緒って局面人によっては違う意味が」って言って神学論争っつってね、神様の学問で論争をし始めると答えが出ないっていって、「神学論争で謎のまんまです」ってハッキリ答えをくれた(以上、古舘伊知郎『おき』と『ごと』の違いより)

 

独特な語りで所々に起こる笑いも凄いけど、教材にしたくなるような内容にとにかく感動した

 

答えが無いというのが答え

 

そのあと松本さんが、

2日ごとにゴリラにどつかれる

2日おきにゴリラにどつかれる

ではちょっと違うなと思っててずっと気になってたらしい。さすが笑い混じりに攻めてくる松本さんのその姿勢。それに対して古舘さんは「2日おきだとゴリラちょっと休憩してくれてる」という的確なボールを投げて返し納得する松本さん。月曜日にゴリラにどつかれたら、2日おきやったら木曜日まで火水はなんかラクできるな。でもごとはあと2日あと1日でどつかれるという恐怖心があるという、笑ってしまうけど分かりやすい例え

 

僕みたいな一般人が何となくで日本語使ってこんな感じでブログ書いてるけど、分かってるつもりでもいざ聞かれたら古舘さんみたいに分からないし、自分はこう思ってたけど相手には伝わって無かったりするのってよくあるし、議論することでへぇ、おぉってなるのが凄い良かった

 

これがもし学校とかだったら、オレがこう言うんだから間違いねえよとか。お前1人が違ってるんだからお前がおかしいんだよって多数決みたいなのが始まって論破して笑いものになるだけ。最近は日常生活で為になる内容をクイズとして出す番組多いけど、あれも一緒で不正解の人を笑いものにするだけのなんか不愉快なものが多かったのに対し、何気ない会話で上から目線でもない、笑い混じりにちゃんとすべらない話なのが感動だった。こういう話大好き

 

僕の話の本題は実はここから

古舘さんの話だけで読むのやめてもいいけど、僕が言いたいのはここから

 

というのも、僕はASD(旧名称でアスペルガー)で、簡単に言えば[回りくどい言い方ではよく分からない]タイプ。京都の人による誉め言葉っぽい嫌味とか全然分からない。アレは流石に極端過ぎるかもだけど、日常的な会話がほぼ全部それと同じに受け取れて、日本語としては通じてるけど内心実はこう思ってるみたいなのが分からず置いていかれる傾向がある。現代アートの芸術性が何を主張してるのか分からないでただ圧倒されるだけみたいなもの

 

聞いて分かったフリしても伝わってなければ動けないし、その都度質問をしても時間が足りないか会話を遮ることになったりして酷いとキレられる。それに対してこっちもキレる。聞いてこいって言ったのはそっちじゃねーか、とか。でもそのくせ『それくらい普通』『考えれば分かる』と言って肝心なところは答えない。水掛け論、押し問答の始まり。教員はその辺上手というか卑怯というか、『友達に聞いて』と言って流す。で友達に聞いて、却って余計な不安を煽るだけの結果になって場を騒がせたとして嫌われるオチ

 

古舘さんの話でもそうだけど、要するに辞書ではこう書かれてるけど、どういう意味で解釈するかというのは結局のところ受け手に委ねられてるってことは何気に多いし、案外答えられない人が多い

この話で感動したのは、言葉の解釈による議論でキレたりするどころか笑い話になって(国語学者に聞けるというのはチートに近いけど)、答えがないという答えが出たこと

 

答えは出たけど、答えはないっていう矛盾している感じがするけど疑問が晴れてスッキリした。結局は言っている側、聞いている側に解釈の仕方として選択権があるんだから、馬鹿にしつつ多数決で論破してきた言い争いの思い出がやっと収束した。やっぱり言語なんて時代と共に意味合いが変わってくるし、スマホやパソコンと同じように常にアップデートしていかないといけないってことだと思った

それこそ『普通』に

 

いま連載中のマンガ『リケ恋』で『普通』に対して議論してるけど、普通という主語のデカさ。普通とは誰が決めるのか

政治家の人やテレビに出演している人が『〇〇は普通』『普通に〇〇』なんて言い出したら共感する声はあっても直ぐネットニュースになって叩かれる時代

言葉って本当に難しい

 

蛇足かもだけど、古舘さんの話になぞって言えば、僕は隔週と毎週で混乱する(というかした)し、ハードルが高いと敷居が高いの違いや、深夜アニメの放送時間とかでよくある『25時』という表記や、その派生で日付を跨いでから言う『明日』で混乱を招いた

 

大学時代先生が、小テストを隔週でやるって宣言したのを、再来週やるのかなと思ってたら毎週だったという。というのも、僕の場合隔週連載のマンガが既に例としてあったからそれで混乱してしまったという話。結局事前勉強無く抜き打ちテスト状態で悲惨な結果というオチ

 

ハードルが高いと敷居が高いは作品や文章で全部違うし、同じ意味として使ってる人が多い。高級レストランはちょっと敷居が高いんだよな〜、みたいな言い回しが今は定番になっている

 

今でこそ深夜アニメばっかりになった時代だけど、毎週土曜25時放送っていう表記で録画の時間を間違えた思い出。ハードディスクじゃなくテープに録画してた時代!野球とか世界大会の延長でズレて何度叫んだことか。新聞のラテ欄も小さい。夜7時9時放送してる番組は無駄に細々と爆笑〜!感動の〜!とか書いてあるのに深夜アニメはタイトルすら省略されてパッと見全然分からない罠

 

メールだとかLINEだとかSkypeやZoomでいつでも連絡できるようになったこの時代。遠く離れてても日付を跨ぐまで話せる様になったからこそ、じゃあ明日な〜、って言ってからの明日はさあどっちだ?

ちなみに僕はその深夜アニメの件もあるし、あけおめメールとかでカウントダウンするんだから日付の区切りは厳格になってしまい「明日」は次の日付という解釈で使ってる。それで一度、友達と遊ぶ日程を間違えて1回揉めた。揉めたというのも語弊があるが、お互いにその場で決めた勢いだけの約束だったから、ポシャっても大した事なかったし、お互いにゴメンで済んだ間柄で良かった

 

こんな具合で、クイズ番組を除けばテレビですら辞書とは違う意味として使っちゃってることも。でもそれで成り立っちゃってるんだから、わざわざ訂正させるのも野暮というもの。どっちが正しいかで戦争せず、次からは気を付けてこうしよう、ってバージョンアップできる関係性は本当に大事。その一方で教える側、あるいは場を仕切る代表者が、『面倒臭い』という顔を露骨に出して説明を省き、お前は普通じゃないと人間性を否定しながら叱責するのは如何なものだろうか

 

ただ僕が細かくて面倒臭い性格しているだけと言われればそれまでだけど、そういう面倒臭いに付き合ってくれる人は有り難い限り。彼女やら後輩の面倒臭い話にも付き合ってあげられる精神的なゆとりは持っておきたいものだ