零霊散の備忘録

平成生まれの30代。最近は競馬ばっかり書いてることに気付いた。

君に恋をしただけじゃ、何も変わらないはずだった/感想

※感想ネタバレ

君に恋をしただけじゃ、何も変わらないはずだった (宝島社文庫)

前作:君に恋をするなんて、ありえないはずだった
―――の、スピンオフ作品。なので当然、前作から引っ張っている話もチラチラと出てはきますが、初見でも入れる話に仕上がっているなー、というのが第一の感想。第二以降の感想はネタバレを含むことになるので、気にしてしまう人は今のうちに回れ右してご退出ください

 

まさかスピンオフが出るとは。前作を上下巻として読んでいたのなら、読まずにはいられないという本好きのサガ。僕程度のレベルで本好きと言ってしまっていいものなのかはさておいて、今回のメインヒロインは前作の派手系ガールの親友

しかしこのヒロインは派手系ガールや武闘派ガールみたいに、○○ガールと称せるものが無い。僕のセンスではカテゴライズしにくいといった方が正しい。無難なところで『ゆるふわガール』と称しておこう。『ゆるふわ』が具体的に何なのかは僕にも分からない

主人公が誰かというと、ゆるふわガール以外は全員新キャラ。当然主人公も新キャラ。作者のあとがきに従うのならば、『ラブコメの邪魔者ポジション』という不遇の扱い。目線は邪魔者青年で話が進んでいく

主人公:邪魔者青年
ヒロイン:ゆるふわガール

舞台は広島
ゆるふわガールが大学進学のために単身で広島に下宿。マンション最上階に住んでいたものの雨漏りが発生し管理会社に修理を依頼。しかし修理は難しいということで、代わりに空き部屋へ移動しないかと提案され、移動費用は管理会社が負担、角部屋で広くなるのに家賃は据え置き、という好条件。この設定には裏がある

邪魔者青年:主人公は元カノに貸していた本を取り返すためマンションの一室に訪れる。そう、その一室こそ、ゆるふわガールの住まい。呼び鈴を鳴らして応答なし。留守だと思い合鍵を使って解錠するも、ガッコン―――という例のアレで部屋に入れず。でもそれがあるってことは、部屋にいるんだよな?と思い中を覗こうとするも扉が閉まって指に激痛

引っ越してきたばかりのゆるふわガールは突然の来客にクエッション
元カノの部屋に見知らぬ女性が居て邪魔者青年もクエッション

という一件があったのち、大学で再会

遅刻、遅刻~、
からの
あー、お前はさっきの!

ってラブコメの定番以上に最悪な出会い方してます。まあ、ね。前作は登場人物高校生ってことだったから、おだやか~な感じで良かったんだけど、18を超えたらそんな生易しい展開は現実でもフィクションでも許してくれないのです。というか、元とはいえ彼女の部屋に突撃して、知らない人が出てきて『どちら様ですか?』というのは、挟まれた指もだけど精神的な部分で大ダメージ。本も結局借りパクですか?というのも大きい

邪魔者青年が主人公という異色の設定ということで、本来ならば主人公だろコイツと思われるのが主人公の後輩。ゆるふわガールとは小学四年生の時にお互いに引っ越して大学で再会したという幼馴染設定付き。フィクションならば文句なしの主人公設定が主人公の後輩というのは皮肉な話。とはいえ、小学生の頃から今の今までずっと疎遠だった人と再会したからと言って話を弾ませられるかはコミュ力次第だし、片や美人、片やイケメンになっているかは別物。僕の場合は………そんなにコミュ力が高い方ではないので、仲良しレベルにもよるけど、ある日突然小学生時代の友人と再会したところで、原稿用紙二行以上会話を続けられる自信は無いし、必要以上にコンタクトしようとも思わない。幼馴染なんて生きるタイムカプセルで人の弱点を知っているパンドラの箱。要約するなら面倒臭い

本来ならば正式主人公なんだけど、主人公じゃない後輩……非正式後輩と称しよう。この非正式後輩は中性的な美少年で周囲からは天使と言われているらしい、ということから想像してしまったのは某ゲーム某アニメで出てくる理性蒸発のポンコツライダー(だが男だ)。なのでイメージ投影に失敗して、登場するたびにイライラしてた。僕はいわゆる『男の娘系キャラ』は好きじゃない。この非正式後輩が『男の娘』設定ではないんだけど、文化祭で某アイドルZのコスプレもとい女装をして、ライブをやって、舞台の上でゆるふわガールに告白をするという展開になるのだが、

非正式後輩は主人公ではない。つまり主人公補正は働かない
結果は残念なことになる。文化祭で舞台の上で、大観衆の前での告白に失敗するという…この空気どうしてくれるんだみたいな状況になってしまうのだ。そりゃ、そうだろうなとも思ってしまう。僕はパーティ好きの欧米なノリは苦手だ。フラッシュモブとか大嫌いだ。好きな人は好きでいて問題ないが、僕が大嫌いなのは個人的な好みの問題だ。そういう演出での告白はちょっとした脅迫に近くてどうにも好きになれない。主人公補正抜きにしても、その場でNOの意思表示になってしまったのは当然だと思った。告白した勇気だけは尊重するが、演出はNG
余談だが、僕は寄せ書きとか千羽鶴とかも好きじゃない。厳密に言うならそれらが許されるのは中学生までと思っている。お金のない子供がささやかに送ってくれるのならニコニコして受け取れるけど、高校、大学、社会人にもなって千羽鶴って微妙だと思うし、寄せ書きに関して言えば『誰コイツ?』って思ってしまうロクに話したこともない人の書き込みに冷めた経験がある。逆に、『書くように巻き込んでしまったんだろうな』と組織的な圧を想像してしまって気持ち悪くなってしまうのだ。そういうのが好きな人からすれば悲観的な考えでしかないんだろうけど

話が前後してしまったが、非正式後輩はゆるふわガールを意識していて、そんな彼女に近寄ってくるムシを牽制したい考え。つまり、ゆるふわガールに関わろうとすれば要らん牽制を食らう構図の出来上がり。邪魔者青年は主人公らしく、偶然にもゆるふわガールと同じ新幹線に乗車していたり、一緒にドライブデートしたりと憎まれやすいポジションに居る

お互いにお互いのことを意識しているんだか意識していないんだか分からないのが恋愛モノの醍醐味なんだろう。非正式後輩は上記の通りで、邪魔者青年は元カノに振られた上に引っ越されて傷心気味になりつつも新しい出会いに期待をしていて、ゆるふわガールは向けられる好意に戸惑っている状態

そこで語られるゆるふわガールの心境、前作の主人公地味系男子に派手系ガールとの関係について。どうもゆるふわガールは前作の主人公:地味系男子がドストライクだったそうで、彼女にしてみれば前作は失恋という形として今作に繋がっているらしい
―――ってことで前作も読み返してから感想を書いている。前作を読んでなくても入れる内容だから、わざわざ読み返す必要があるわけじゃないけど、シリーズで本を揃えていたら巻き戻って確認したくなるもの。確かに彼女の言う通り、色々とからかい半分でモーションかけたりしているようにも見える。しかし親友が気になっている人だから、と自制する気持ちもあったり、きちんと告白できずに終わって(ハグはしたが)、なのに2人は付き合っていて、と心穏やかじゃないまま大学にきて幼馴染から告白されたり、心の整理が追い付いていない状況と見える

積極的な非正式後輩よりは邪魔者青年である方が距離感的には良いってことみたいだが、周辺事情からゆるふわガールとの接点でロクな目に合っていない邪魔者青年は彼女からの言葉・好意に対して斜に構え、元カノとの失敗も影響して真に受けて大ダメージになってしまうより、斜めにはじいてダメージ少なくな対応

そんなモヤモヤしている関係に状況はさておいて、ゆるふわガールの『食わず嫌いって、ATMの時間外手数料より損』という言葉に感動した。個人的には、好感度のポイント三倍デーみたいな比喩もアリだと思ったが、手数料という損な部分も残しているところがいいセンスだと思った。要は損をしているのはタイミング次第で、受け取り方次第ではいくらでも幸福に感じられるというもの。好感度ポイント三倍デーという比喩では、そこしか頑張らないという意味でも見れるし、通常のポイントが無意味に感じられてしまう。ATMとは、また分かりやすい例えだ

話は微妙に反れるが、
この作品を書いた時期が想像できてしまう『35億』とか『忖度』というワードが出てきたりする

 

 

 

 

今作は微妙な三角関係で、2人の急接近は邪魔者青年が元カノに貸していた本にあったり、作中の水面下で進行している邪魔者青年の妹が描くマンガ(作中では台本・プロットみたいに書かれている)にあったり、あーなるほどねー、と思わせる展開に。前作は前作で良かったけど、どちらかと言えば今作の方が好き。今作は大学生なのに某メーカーを気にしてしまうような展開は無い


さてさて、
ここからは色々と蛇足的な、個人的な総合感想になるわけなのだが、
どうにもラブコメはSFとかホラーと違ってスッキリした感じになれない。恋人同士になって終わり、という感覚が微妙だ。その先がまた気になってしまう。それはラブコメに限らず日常系全般に言えることでもあるのだが…。ラブコメは…結局はフィクションなわけで、物語のアクセント程度に恋愛話が出てくるのならまだしも、恋愛要素のみで進むとなれば、最初から最後まで疑問だらけ。例えるのなら、ちょっとしたパフェに小さく乗っているミントなら好きだけど、チョコチップミントのアイスを食べるほどミントが好きじゃない、そんな具合。それだけ僕は恋愛感情が一般とは違い過ぎているってことなんだろう。疑問というよりは好みの問題。何が美味しいのか理解出来ないように、何が楽しいのか分からない

今作のキーアイテムは本だった
彼氏彼女の興味があるものに、自分も興味を持ってみよう。という姿勢は良いと思う。それで貸して返ってこないという………今作主人公の元カノだ。借りといて読まない、返さないは、正直人としてどうかと思う。最後まで読めとは言わない。借りたは良いけど私にはちょっと難しかったー、と一言添えてさっさと返せばOKだ。しかしそれが好きな人相手に、好きな人の興味のあるものに対して、それを言うのに抵抗があるということなんだろう。だからと言って借りパクはよろしくない。それが出来ないのなら、中途半端に興味を示すものじゃないって話だ

あるいは、持ち主以上にハマってしまうということもあるだろう。それならば共通の趣味を持つことが出来たということで万々歳………というわけでもない。僕に関して言うのなら

僕は同じ趣味だからと言って無条件に仲良くなれる性格はしていない。同じ趣味なんて言うのは、例えるなら同じ駅で同じ電車に乗るというだけにすぎない。確かに、それをきっかけにして仲良くなれはするのかもしれない。が、僕にそんなコミュ力は無いという話だ

むしろ、同じ趣味で喧嘩したい
平和的に言うならゲーム対戦したい感覚

恋愛マンガみたいな恋愛がしたい、っていう恋愛作品となると、もう何が何だか分からないし、デートの定番と、青春の定番と、というランキングのランキングになって、謎が謎を呼んでしまって、流行に乗っているんだか流行に流されてるんだか分からない
楽しければそれでいいというのはアリだと思うけど
それを個人に当てはめてみるわけです
それが誰かである必要があるのか
それ僕である必要ある?

興味・魅力のある対象、モノやヒト
それらを素因数分解して、素数…代用の利かない何かであって欲しい欲求
それが、僕の考える恋愛感情ですかね
割り切れない関係という意味も込めて